12日に阪神競馬場で行われた「京都記念」(芝2200メートル、4歳以上、G2)で、勝利したドウドュースに次ぐ2番人気に推されたものの、最終コーナーあたりで心房細動を発症し競走中止で最下位に敗れたエフフォーリア。
エフフォーリアが現役を引退し種牡馬となることが、同馬のオーナーであるキャロットクラブのホームページで発表された。
エフフォーリアについては、父エピファネイアの産駒の多くがそうであるように「早熟だった」と結論付ける声が一定数あるようだが、筆者はこれに異を唱えたい。
3歳時(2021年)に皐月賞、天皇賞・秋、有馬記念を制し年度代表馬に選出。エフフォーリアを中心に、2022年以降のJRA名シーンがいくつも刻まれると見られていたものの、実際にはその後、エフフォーリアの勝利する姿はおろか、馬券圏内に善戦する姿を見ることも叶わなかった。
しかし、掲示板すらも逃した大阪杯、宝塚記念、京都記念はいずれも阪神競馬場でのレース。
長距離輸送のなかったレースでは、昨年暮れの有馬記念で5着に敗れた以外は7戦6勝で2着1回と準パーフェクト。また、昨年の有馬記念は、1~7着までエフフォーリア以外いずれも3歳牡馬または古馬牝馬で、55キロの斤量的恩恵がある馬に対し、半年ぶりのレースという中でエフフォーリアは善戦してみせていたのである。
そして、心房細動を発症していなければ、先の京都記念でも好位から横綱相撲でドウドュースと互角の戦いを繰り広げていたのではないだろうか。そう思わせるだけのレース運びをエフフォーリアは見せていた。
引退が決まった今、エフフォーリアが現役を続けていれば長距離輸送を克服できたのか、早熟ではないと証明できたのか、それを確かめる術はない。
だが、エフフォーリアの血を継ぐ産駒たちが、その可能性を大いに感じさせるような戦績を残してくれることに期待したい。
あるいは、イクイノックスを筆頭にキタサンブラック産駒が父キタサンブラックとは異なる「切れ味抜群の末脚」という特性を見せているように、エフフォーリアとは異なる特性で他馬を圧倒するエフフォーリア産駒の出現を心躍らせて待ってみるのも良いのではないだろうか。
(文/豊田武志)