2022年の日本シリーズはオリックスバファローズが2敗1分けから4連勝でヤクルトスワローズを下し、見事な逆転で26年ぶりの日本一に輝いた。
MVP(=最優秀選手)にはオリックスの杉本裕太郎選手、優秀選手には吉田正尚選手、山崎福也投手(いずれもオリックス)、塩見康隆選手(ヤクルト)、敢闘賞にはオスナ選手(ヤクルト)がそれぞれ選出された。
表彰選手の発表前には、オリックスの日本一を導いた立役者と言える強力リリーフ陣、特に宇田川優希投手、比嘉幹貴投手を推す声が多く聞かれた。
宇田川投手は2020年に仙台大学から育成ドラフト3位でオリックスに指名されたプロ2年目。昨年は1軍登板はなく、今年7月に支配下登録されたばかり。
そこから「リリーフ四天王」と呼ばれる存在に怒涛の勢いで駆け上がり、このシリーズでは2度の回跨ぎ登板をいずれも無失点に抑えるなど大活躍した。
一方の比嘉投手は2009年に日立製作所からドラフト2位でオリックスに指名されプロ入り。あと1ヶ月あまりで40歳を迎える大ベテランである。
シーズン中も5勝0敗10HPで防御率2.53とブルペンを支えていたが、今回のシリーズで見せた活躍は驚異的だった。
第1戦ではエース山本由伸投手が5回裏のマウンドに上がるも、先頭のキブレハン選手を0-2としたところで左脇腹に違和感を覚え緊急降板。ここで代わってマウンドに上がった比嘉投手は、キブレハン選手、塩見選手から連続三振を奪うなど三者凡退に抑えた。
第2戦では9回裏に内山壮真選手の劇的な同点3ラン本塁打が生まれ勢いを保ったままのヤクルト。しかも2番からの好打順で迎えた11回裏に比嘉投手はマウンドへ。先頭の奥村展征選手にセンターへヒットを許すも、山田哲人選手を1球で一塁ファールフライに切って取り、続く村上宗隆選手、オスナ選手を連続三振に抑えてこのピンチを切り抜け3-3の引き分けに大きく貢献した。
第3戦で比嘉投手がマウンドへ向かったのは、前の回に山田選手に3点本塁打を浴び、この回も一死から村上選手に二塁打を食らった先発の宮城大弥に代わっての6回表の場面。オスナ選手には8球粘った末に四球を許すも、一死一二塁から中村悠平選手を中飛、サンタナ選手を空振り三振に抑えてここも試合が壊れそうなところを踏ん張ってみせた。
第5戦では、比嘉投手は直前で失策により併殺を取り損ね一死一三塁とヤクルトに2-2からの勝ち越しの大チャンスを与えた5回表絶体絶命の場面で登板。ここで比嘉投手はオスナ選手を見事に併殺打に打ち取りピンチを脱出した。
そして第7戦では、5-0と大量リードしていながら山崎颯一郎投手が村上選手の適時打とオスナ選手の3点本塁打であっという間に1点差。ヤクルトに押せ押せムードが高まった8回裏一死無走者という場面で比嘉投手はマウンドへ。ここでも比嘉投手は中村選手を空振り三振、サンタナ選手には9球粘られながらも投手ゴロに抑えてみせ、チームの日本一を大きく手繰り寄せたのである。
残念ながら比嘉投手は個人賞を獲得できなかったものの、ツイッターでは「比嘉さん」が上位トレンド入り。「比嘉さんこそMVP」「私の心の中では比嘉さんがMVP」「中年の星・比嘉さんありがとう。あなたのおかげで日本一の胴上げを見られました」といったコメントが多数見られた。
(文/樋口健太郎)