昨年12月25日のロシア選手権におけるドーピング検査において、心臓病の治療などにも使われ持久力向上が期待できる禁止薬物トリメタジジンに陽性反応を示したとして、北京五輪の女子フィギュアスケート個人戦への出場が危ぶまれていた、ロシアオリンピック委員会（＝ROC）代表のカミラ・ワリエワ選手（15歳）。
ロシア反ドーピング機関（RUSADA）がワリエワ選手の資格停止処分を暫定で解除する手続きを行い、この暫定解除を不服とした国際オリンピック委員会（IOC）、世界反ドーピング機関（WADA）、国際スケート連盟（ISU）がスポーツ仲裁裁判所（CAS）に訴えを起こしていた。
関係者だけでなく、世界中のスポーツファン、公平な競技開催を信じる人々の間では、「スポーツ仲裁裁判所（CAS）は、厳格な考え方にもとづき、当然にワリエワ選手の出場停止を支持する。フィギュアスケートに限らず、ロシアオリンピック委員会は五輪追放になる可能性さえあるのでは」という見方が大勢だった。
ところが、14日にCASが示したのは「ワリエワ選手は北京五輪に引き続き出場可」という判断だったのである。
「CASが示した今回の判断の根拠は、『16歳未満のワリエワ選手は処分が軽減される保護対象であること』『五輪期間中に陽性反応を示していない選手への考慮』『今回出場を認めなければワリエワに取り返しのつかない損害を与えること』を挙げていますが、多くの方がこの判断に納得していませんよ。
わずか1ヶ月半ほど前の検査、しかも簡易検査などではなくしっかりとした検査体制で何重ものチェックがある中で『禁止薬物が検出された』という事実がありながら、16歳未満をドーピングで失格にしたらかわいそうという理由で出場させてしまうというのは意味不明ですから、納得しない人が多いのは当然のことでしょう。
日本でもこの判断には疑問を感じている人の方が圧倒的に多く、『衆目がそっちに向いてくれて助かったと思っているYOASOBIや古塔つみくらいでしょ、今回のワリエワちゃんに対する決定を心底喜んでるのは』という指摘が出ている状況です」（スポーツコメンテーター）
ショートトラック、スキージャンプ、スノーボードハーフパイプ、スノーボードパラレル大回転、スピードスケートと、いくつもの競技で不可解な判定が起こっている北京五輪に新たな不可解決定が追加されたと言ってもいいのではないだろうか。
（文／樋口健太郎）