11日の北京五輪では、男子スノーボードハーフパイプで平野歩夢選手が悲願の金メダル獲得を達成し、今大会2つ目の金メダルをチーム日本にもたらした。
平野選手の見事な逆転劇での戴冠は、日本に勢いを与えただけでなく北京五輪自体を救ったとも言える。
と言うのも、今回の北京五輪では、開催初期から不可解な判定が相次いでいるからだ。
ショートトラックで幾度も中国に有利な判定が下され、スピードスケート女子1500メートルでは通常であれば失格扱いになるはずの髙木菜那選手と同走だった中国選手はお咎めなし。
さらに、ジャンプ混合団体では高梨沙羅選手を含めた女子のトップ選手ばかり5人がスーツ規定違反とされて失格に。
女子のスノーボードパラレル大回転では竹内智香選手が同走選手に勝利したものの微妙な判定で失格。このときの判定を行うメンバーは8人中6人が同走選手と同じドイツ人だったという。
ほぼ毎日のようにおかしな点が出てくる北京五輪は11日、なんと平野歩夢選手にその矛先を向けようとしていた。
平野選手が優勝を決めた3本目と、演技終了時点では2位に甘んじた2本目では、演技の難度は同じ。確かに3本目の方が高さやスムーズさといった面でより優れていたことは間違いないが、それでも2本目にも目立ったミスなどは見当たらず、2本目終了時点で平野選手がトップに立っているべきだったという指摘は多い。
もしも、平野選手が最終演技で逆転をしてくれていなければ、おそらく大きな議論を呼んでいたことだろう。
だからこそ、平野選手が北京五輪のだらしなさ、みっともなさをギリギリのところでもちこたえさせてくれた救世主と呼べると個人的には感じている。
ただ、2本目で正当な評価を受け平野選手がトップに立てていたなら、最終演技では今回は封印することになった「新たな技」をクールに披露していた可能性は高い。
そうすれば、スノーボードハーフパイプの進化の歴史はより速まっていたことは想像に難くない。そういう意味では大いなるチャンスを失ったとも言えるだろう。
(文/有村和巳)
~ライター略歴~
静岡県出身
大学までは野球部で白球を追いかけていた
今は野球を中心にスポーツ全般の記事を執筆している