
「闘う料理人」として知られるこめお(沼倉大将)さんが統括する「割烹こめを」の出店メニューが、集団食中毒と断定された。
8月22・23日の麻布十番納涼まつりで販売した「冷やし蟹ラーメン」を食べた客から体調不良が相次ぎ、港区みなと保健所は9月3日、原因物質をサルモネラ属菌と発表した。店は同日から7日間の営業停止処分を受けている。
「食中毒」という表現は強いが、今回検出されたのはノロウイルスではなくサルモネラ属菌だ。
患者は公式発表時点で78人。男性48人(1歳〜61歳)、女性30人(9歳〜47歳)で、下痢・腹痛・発熱を訴え、51人が医療機関を受診、うち3人が入院した。全員すでに退院している。まつり後のSNS上では体調不良の訴えが116人規模まで膨らんだとの報道もあるが、保健所が食中毒として確定したのは78人だ。
断定の根拠は三つある。
第一に、患者全員に共通する食事がこの冷やし蟹ラーメン以外になかったこと。第二に、喫食から発症までの潜伏時間と症状がサルモネラ食中毒と一致したこと。第三に、複数の患者だけでなく、調理従事者のふん便からも同じサルモネラ属菌が出たことだ。
港区の公表資料では、従事者ふん便8検体のうち2検体がサルモネラ陽性と記されている。患者側の便検査でもサルモネラが多数検出された。店側は残品を廃棄したとして食品そのものは残っていなかったが、共通食と菌の検出から原因食と断定された。
ここが本件の核心になる。サルモネラは鶏・豚・牛などの腸管や自然界に広くいる菌で、食材の加熱不足でも起きる。ただ、従事者のふん便からも検出された事実は、「食材だけが悪い」では説明しにくい。菌を保有した従事者が、排便後の手洗いを十分にせず調理や盛り付けに触れた場合、食品を介して客へ広がる典型的な経路になる。屋外イベントで冷たい麺を大量提供する現場では、手洗い設備や手袋交換が追いつかず、二次汚染が起きやすい。残った商品の翌日使い回し疑惑は店側が否定しているが、従事者便からの検出は、衛生管理そのものが崩れていた可能性を強く示す。
つまり「カニが悪い」「スープが悪い」以前に、人の手を介した汚染――人災の色彩が濃い。保健所は食品衛生法第6条第3号違反として処分した。民事の補償に加え、衛生管理の怠りが認められれば業務上過失致傷が論点になる、との指摘も出ている。
こめおさんは調査結果を受け、「体調を崩された皆様に心より深くお詫びする」「再発防止を徹底し、補償も順次進める」と謝罪した。営業再開日は未定としている。
夏祭りの屋台は華やかだが、冷たい料理と大量調理は衛生の隙を一気に広げる。今回明らかになったのは、排泄後の手洗いという最も基本的な工程が、78人分の症状につながった可能性だ。
(文/及川るみ)