3月19日の「第44回 日本アカデミー賞授賞式」にて最優秀作品賞、そして主演の草彅剛さんが最優秀主演男優賞、服部樹咲さんが新人賞を獲得した、映画『ミッドナイトスワン』(配給:キノフィルムズ、監督:内田英治さん)。
このたび、主に最優秀主演男優賞を獲得した草彅さんの演技を拝見すべく劇場に足を運んだのだが……。
間違いなくナンバーワン
すでにこれまでに、日本アカデミー賞の優秀主演男優賞に輝いた他の4人が出演する映画は見ており、『ミッドナイトスワン』の草彅剛を見て、「これは間違いなくナンバーワン」だとまざまざと感じさせられた。
トランスジェンダーの“凪沙”という役が、いや人物がまさにそこに実在していると感じたのだ。
また、随所に昨年急逝した三浦春馬さんの姿を想起させられた。
と言うのも、凪沙と一緒に暮らすことになる“一果”という少女をこれが映像作品デビューとなる服部樹咲さんが演じているのだが、草彅さんの圧倒的な演技力、そして人間力が服部さんの才能を存分に引き出していて、服部さんは物凄く自由に生き生きと作品の中で生きているように感じた。
共演者、特に後輩俳優が演じやすいように撮影の合間そしてカメラが回っている最中に配慮をするという意味で、三浦さんのことが頭をよぎったからだ。
また、一果をネグレクトしている母親“早織”を水川あさみさんが演じていることも影響しただろう。
水川さんは、2016年放送のドラマ『わたしを離さないで』(TBS系)、2018年のオムニバスドラマ『tourist』(TBS系)で三浦さんと共演しており、昨年7月の三浦さん急逝から数日後に、「いつもわたしの話を楽しそうに聞いてくれて思い出すのは笑顔ばかりで、記憶は新しく鮮明で受け入れるにはまだ苦しくて、寂しいな寂しいよ」「深呼吸しながら春馬らしく心から笑ってて。みんなあなたを想ってる、忘れないよ」などの三浦さんへの言葉を自身のインスタグラムに綴っていた。
また、『tourist』撮影当時、水川さんは三浦さんの写真をインスタグラムに投稿し「いつも笑ってくれる春馬。春馬はストイック男子。常に何かを勉強していて、1分も無駄にしないように生きてる。あと、ちょっと天然だから変で面白いとこもある。良い奴」とコメントしてもいたからである。
叶わないことを、タラレバを語っても仕方ないのかもしれないが、3月19日の日本アカデミー賞授賞式で『ミッドナイトスワン』の草彅剛さん、『天外者』(配給:ギグリーボックス、監督:田中光敏さん)の三浦春馬さんが最優秀主演男優賞を争う光景を見たかったなと思った。
(文/西野麻衣)
~ライター略歴~
茨城県出身
シナリオライター、エッセイスト、芸能ライターと多岐にわたる執筆業を行っている