5日、三浦春馬さんの最後の主演映画『天外者』(配給:ギグリーボックス)の大ヒット御礼、そして三浦さんの誕生日を記念して、渋谷HUMAXシネマにてトークイベントが行われた。
田中光敏監督、トーマス・グラバー役のロバート・アンダーソンさん、飛び入り参加となった五代才助(後の五代友厚)の幼少期を演じた末次寿樹さんが登壇した。
田中監督は、三浦さん演じる五代が髷(まげ)を自ら切るシーンについて詳しく振り返った。
「春馬くんは、すごく遠慮深い、遠慮がちな男で」と切り出し、演出について相談したいときにも「いきなり“こうしたい”とは言わない人なんです」と説明。
「春馬くんは撮影が休みの日なのにフラッと撮影現場に来て、方言指導の役者さんと一緒に自分のところへ来て、役の衣装までしっかり身に着けてて、殺陣の練習とかしてるんですよ」「それで“あれ?春馬くんどうしたの?”って聞くと、『いや、ちょっと、見てもらえませんか。いいですか?』と言ってきて、“いいよ、こんな休みの日なのにどうしたの?”って尋ねると髷を切るシーンのところをひとしきり演じて見せながら、相手を切ろうとする五代の動きについて『僕、ここで人が切れないんです』というのをジェスチャーで表すんですよ。それで、僕の目を見ながら『これが出ないんです』と口にするという。それから、僕が“春馬くん、違和感があるの?”と聞くと、『そうなんです、監督。僕どうしてもここが違和感あって』と詳しく説明してくれて、それで“(人を切る立ち回りなしで)もう1回やってみようか”って言うと、そのとき初めて見せるその流れを見事に春馬くんはやってのけるんですよ。“その方がいい、もうそれで行こう。変更しよう”って告げると、彼はほんとうにクシャーっとした笑顔を見せるんですよね。そして、『『監督ありがとうございます!ちゃんと腹に落ちましたんでこれで行きます!』と言って、一緒に来た方言指導の役者さんと帰っていくっていう」と詳細なやりとりを回顧。
そのうえで「人を傷つけない、その優しさや、唐突に声をかけない、いきなり本題に入らない思慮深さというか、本当に気遣いの人なんだなと感じました」と三浦さんの人柄についてコメントしていた。
あらためて、三浦春馬さんという俳優、そして人間の奥ゆかしさ、素晴らしさが感じられるトークイベントとなったことは間違いなさそうだ。
(文/西野麻衣)
~ライター略歴~
茨城県出身
シナリオライター、エッセイスト、芸能ライターと多岐にわたる執筆業を行っている