
NHK連続テレビ小説『あんぱん』(主演:今田美桜さん、相手役:北村匠海さん)が、2025年3月31日の放送開始から第3週目を終え、世帯平均視聴率で前作『おむすび』(主演:橋本環奈)の同期間を大きく上回る好調な滑り出しを見せている。
『あんぱん』の勢いは、視聴者の心を掴むストーリー展開と豪華キャストの魅力、そしてNHKの戦略的な取り組みが背景にあるようだ。
ビデオリサーチ(関東地区、世帯平均)によると、『あんぱん』の初回視聴率は15.4%、第2週平均、第3週平均はともに15.3%を記録。一方、『おむすび』は初回16.8%と好スタートを切ったものの、第2週で14.7%、第3週では13.5%まで下落し、以降も低迷が続いた。『あんぱん』は初週こそ『おむすび』を下回ったが、第2週以降は安定して高い視聴率を維持し、特に第3週では『おむすび』を1.8ポイント上回る圧倒的な差を見せつけた。
『おむすび』の全話平均視聴率は、歴代最低の13.5%(2009年後期『ウェルかめ』)を下回る13.1%と、厳しい結果に終わった。対照的に、『あんぱん』は第3週終了時点で週間平均15.0%以上をキープし、視聴率ワースト記録の更新を回避するだけでなく、視聴者の期待に応える作品として評価されている。
『あんぱん』は、「アンパンマン」を生んだやなせたかしと妻・小松暢をモデルに、昭和初期の高知を舞台にヒロイン・朝田のぶ(今田美桜さん)と柳井嵩(北村匠海さん)の愛と勇気の物語を描く。第3週「なんのために生まれて」では、のぶがパン食い競争で奮闘し、家族のためにラジオを手に入れる姿が描かれ、視聴者から「朝から元気をもらえる」「家族の絆に感動」と好評。Xでは「今田美桜の生き生きとした演技が朝ドラらしい!」といった声が溢れた。
『おむすび』は現代を舞台にギャル文化と栄養士の融合を目指したが、「ギャルと震災のテーマがちぐはぐ」「食のテーマが深まらなかった」との批判が。『あんぱん』のシンプルで共感性の高い人情ドラマは、視聴者の心を掴む力が強い。
2025年はNHKの前身・東京放送局の開局100周年という節目。『あんぱん』は「100周年記念」を掲げ、豪華キャストの起用や高知ロケの充実で注目を集めた。
公式Xでの情報発信も早く、放送2カ月前の1月27日から今田さんのメッセージ動画を公開するなど、PR戦略が功を奏した。一方、『おむすび』は放送10日前まで情報が少なく、準備不足が視聴者離れを招いた。
『おむすび』の低迷からバトンを受け取った『あんぱん』は、視聴率だけでなく、視聴者の心を掴む作品としての評価も高い。朝ドラの王道である「明るいヒロイン」と「共感性の高い物語」を武器に、今田美桜と北村匠海は半年間の放送でさらなる感動を届けるだろう。次週以降、のぶと嵩の関係性がどう深まり、「アンパンマン」誕生に至るかが楽しみだ。
(文/森八郎)