21日、「毎日新聞」の“記者の目”というコーナーに「バリアフリーへ 役立つアプリ 共生社会、映画館から」という見出しの記事が掲載された。
10歳の頃に網膜剥離により全盲となった、コンテンツ編成センター、ユニバーサロン編集長の岩下恭士さんによる記事だ。
記事には視覚障害者や聴覚障害者も、健常者と同じように街中の映画館で上映を楽しめるスマートフォン専用アプリの存在や、バリアフリー対応の映画を広めるNPO法人「メディア・アクセス・サポートセンター」(MASC)について綴られている。
この中で、三浦春馬さんにとって最後の主演映画『天外者』(配給:ギグリーボックス)が、2020年11月時点の調査では年間13%ほどしか実施されていないバリアフリー対応映画の1本であることも紹介されている。
同映画がバリアフリー対応となった経緯として、ギグリーボックスが監督の田中光敏さんの「世代や性別を超えて多くの人に見てほしい」というボーダレスな映画普及の願いを受けて、1月に音声ガイド付きとなったことも記されている。
岩下さんの記事詳細については「毎日新聞」の有料WEB版などで確認できるので、ぜひそちらを呼んでいただきたいが……。
誰もが日常を豊かに過ごせる世の中を目指す
「全盲の記者である岩下さんが、幼少の頃に受けた障害者に対する理解が浅い人からの心無い言葉について書かれている部分には、ハンディを抱えて生きている方に対し、もしかしたら自分も意図せずとも嫌な思いをさせてしまっていたかもしれないと身につまされる思いです。
現状では13%程度と、まだまだ広く普及されているとは言い難い映画のバリアフリー化の現実や、少しでもそんな状況を解消しやすいようにと、映画館の設備を新設せずとも対応できる最新のアプリの素晴らしさも感じました。
また、映画『天外者』の主人公・五代友厚が掲げた『男も女も関係なく、誰もが夢を見られる国に』という思いを真の意味で実現する重要性を痛感しましたね。
性別だけでなく、老いも若きも、健常者も障害者も、誰もが日常を豊かに過ごせる世の中を目指して行くことは、当然多くの課題をクリアしなければいけませんが、必ず成し遂げなければいけない目標だと思い至りましたよ」(メディア記者)
田中監督は生前の三浦さんとの約束ということで、日本中のあらゆる人に、そして世界中の人にも『天外者』を通して、より良い社会の成立を目指そうというメッセージを送り続けているように感じられる。
五代を演じた三浦さんももちろんそうだが、その思いを受けて進み続ける田中監督も現代の『天外者』そのものと言えるだろう。
『天外者』の歩む道のりを今後も注目していきたい。
(文/窪田翔吾)