メジャーリーグ・ロサンゼルスドジャースの大谷翔平選手名義の口座から24.5億円もの巨額資金を、無断で違法賭博業者へ送金。送金実績が大谷選手にバレないように、チーム大谷や銀行すらも欺いていたことが発覚した、元通訳の水原一平容疑者。
騒動が起こるまでは、大谷選手同様に「聖人」であるかのようにテレビで報じられ続けてきた水原容疑者が、実は他の通訳など英語と日本語の両方に精通している人達からは、「テキトーな人間」「大谷選手の誠意を台無しにしている」といった批判を集めていたことが分かった。
ある時、水原容疑者は、サンフランシスコジャイアンツの担当記者から「サンフランシスコの印象はどう?」と尋ねられ、これに大谷選手が答える姿勢を示した際、勝手に「そんな質問には答えられない」と虚偽通訳をしていたという。
またある時には、2度目のトミージョン手術について尋ねられ、大谷選手がかなり具体的なことを丁寧に、ファンやメディアのためにと日本語で説明していたにもかかわらず、水原容疑者はほとんどの部分を省略して訳していたという。
こうした姿勢は、やはり誤解を生んでいたようだ。
ドジャースへの入団会見時、大谷選手はエンゼルスについてかなり心を込めたメッセージを口にしたのに対し、水原容疑者は「今まで楽しかったです。ありがとう」と極めて端的な言葉だけにとどめ、エンゼルスのファンからは「何年も応援してきたのに、たったそれだけかよ!」と怒りを買っていたという。
水原容疑者のしたことは論外だが、大谷選手の言葉をテキトーに訳していることは、テレビの報道担当者の一部は十分に気付いていたはず。
それにもかかわらず、水原容疑者を聖人であるかのように仕立てたのは、ほかならぬテレビだろう。
水原容疑者の唯一褒められる点は、こうしたテレビ報道の杜撰さを白日の下に晒したことと言えるかもしれない。
(文/中牟田晃)