経済産業省に勤めるトランスジェンダーの職員が「職場の女性用トイレの使用を制限されているのは不当だ」として国を訴えた裁判。
最高裁判所は、「トイレの使用を制限することを認めた国の対応は違法だ」とする判決を言い渡した。
同職員は男性として入省。その後、性同一性障害との診断を受け、女性としての勤務を希望。これを受け、経産省が「一部の女性トイレについては使用を認める」と提案したのに対し「制限はおかしい」として提訴。
東京地裁での一審は「制限は不当」、東京高裁での二審は「制限は妥当」との判断が出ていた。
今回の最高裁の判断には「トランスジェンダーではない女性の権利を侵害している」「性暴力や性加害のリスクを増幅させる」「怖いと感じる女性の気持ちを踏み躙ってるではないか」など、反発の声が多数上がっている。
ネット上には、判決を出した裁判官の罷免を求める声も。
今回の裁判は、今崎幸彦裁判官(裁判長)、宇賀克也裁判官、林道晴裁判官、長峰安政裁判官、渡邉惠理子裁判官、以上5人の裁判官によって審理された。
最高裁判所の裁判官は、衆議院選挙と同時に行われる「国民審査」によって罷免することができる。(罷免を求める票が有効投票の50%以上であれば実現する)
ただし、審査の対象となるのは、最高裁の裁判官に任命された直後に初めて行われる衆議院選挙と、1回目の審査から10年経過した直後の衆議院選挙において。
今回の判断に関わった裁判官のうち今崎裁判官以外の4人は、前回2021年10月末の衆議院選挙までにすでに国民審査を受け、罷免の必要ナシと判断されている。
しかも、最高裁判所裁判官の定年は70歳であるため、今崎裁判官以外の4人が再審査の対象となることはない。
衆議院の解散があれば年内にも、なければ2025年の10月に国民審査を受けることになる今崎裁判官には、果たしてどのような国民の判断が下るだろうか。
なお、これまでに国民審査によって最も罷免を求められたのは、1972年の下田武三さんに対するおよそ15%で、国民審査によって罷免された最高裁判所裁判官は1人もいない。
(文/福島秀明)