4日、東京競馬場で行われた安田記念(G1・芝1600メートル)は、単勝4番人気、戸崎圭太騎手が手綱をとったソングラインが、大外18番枠という不利をものともせず、直線で凄まじい末脚を見せ優勝した。
終わってみてから「ソングラインが単勝7.4倍は不当評価だった」と気付いたファンは結構多かったに違いない。
後悔先に立たず、とはよく言ったものだが、ソングラインがなぜ人気の盲点となってしまったのか。
まずは、何と言っても大外18番枠を引いてしまったことが多分に影響したことは間違いない。
だが、安田記念が行われる東京競馬場は翌週が開催最終週。開催が進む中で芝は内側から傷みが進み、おまけに梅雨時直前のこの時期は不安定な天気が続いてますます芝は荒れ「外伸び馬場」となることがほとんど。
つまり、大外枠はイメージほどにマイナスではないどころか、むしろ強烈な末脚が武器のソングラインにとってはプラスですらあったのだ。
次に、ソングラインの馬柱に2走前10着、3走前5着と大きく割り引きたくなる実績が残っていたことも確実に影響しただろう。
だが、この2敗は1351メートル、1200メートルと距離適性の低いレースでのもの。度外視して問題なかった。
そして、1番人気に推されたシュネルマイスターには3歳時のNHKマイルC(G1)、2番人気に推されたソダシには昨年のヴィクトリアマイル(G1)で、いずれも敗れているという実績も影響したと思われる。
しかし、この2レースでソングラインは、いずれも3角で決して小さくない不利を受けており、むしろ不利がなければ両レースを制していてもおかしくなかった。
特に、NHKマイルCに至っては、先述の不利だけでなく直線半ばで先頭に躍り出たソングラインはラスト100メートルほどで内に刺さりながらソラを使う様子も見せており、それでもなお勝ったシュネルマイスターにハナ差しか付けられておらず、少なくともシュネルマイスターとの対戦成績は戦前の時点で2戦2勝(昨年の安田記念で勝利)だったと言っても過言ではなかったのである。
もしも過去のレースで不利を受けていなければ、今回の安田記念で東京マイルG1を5連勝していた可能性も十分あるソングライン。
「来年のヴィクトリアマイルや安田記念では本命で」と考えているファンもいるかもしれないが、ソングラインを所有するサンデーレーシングは6歳の3月までで引退するのがクラブの規定。
今秋はBCマイル(G1、芝1600メートル、11月4日=米国・サンタアニタ)を目標にするとサンデーレーシングの吉田俊介代表は語っており、残念ながら国内のG1レースではもうソングラインのアノ末脚を見られる機会はなさそうだ。
(文/豊田武志)