4日、東京競馬場で行われた安田記念(G1・芝1600メートル)は、単勝4番人気、戸崎圭太騎手が手綱をとったソングラインが、大外18番枠という不利をものともせず、直線で凄まじい末脚を見せ優勝した。
ソングラインは昨年の同レースも制しており2連覇を果たすとともに、3週間前の同舞台で行われたヴィクトリアマイル(G1・芝1600メートル)も制しており、G1連勝を遂げた。
ここに来てソングラインの充実ぶりが著しく、古馬マイル戦線の主役となったことは間違いないが、今年の安田記念で一番強いレース内容を見せたのは2着のセリフォスだったと言っても過言ではないだろう。
セリフォスは4番枠から好位でレースを進め、直線では少し進路が狭くなる場面もありながら、名手D・レーンに導かれ先頭に躍り出ると、ソングラインにはかわされたものの、シュネルマイスターらの強襲を凌いで2着。昨年のマイルCS(G1・芝1600メートル)優勝馬としての実力を見せつけた。
セリフォスはマイルCSを4角13番手という後方に位置しながら、ラスト3ハロンで33.0秒という最速の脚を見せ優勝。ところが、今回は打って変わって好位から上がり33.6秒でまとめての2着。
しかも、馬場状態が「良」まで回復していたとは言え、金曜から土曜午前にかけてかなりの雨量があり、なおかつ開催が進んだ中で直線内側の芝はかなり傷んだ状態だった。したがって、終始、内側を通りながらもソングラインから0.2秒差の2着に好走したことは高く評価できる。もしも、セリフォスとソングラインの枠順が逆だったなら、1~2着が入れ替わっていた可能性も十分あるだろう。
また、セリフォスの父ダイワメジャーは、3歳春に皐月賞(G1・芝2000メートル)を制するも、以降はG1勝利から遠ざかり、5歳秋に天皇賞秋(G1・芝2000メートル)で2年6ヶ月ぶりのG1勝利を飾ると、マイルCS、安田記念、マイルCSと6歳秋までにマイルG1を3連勝するという、早熟性と成長力を兼ね備えた活躍を見せたのに対し、産駒には早熟性だけが受け継がれているケースがこれまでほとんどだった。
ダイワメジャー産駒の古馬の芝G1成績は、この10年ほどの間で勝利は0回、2着が3回。2着3回はいずれもレシステンシアが1200メートルで記録したもので、マイルG1での連対はただの1度もなかった。
さらに、ダイワメジャー産駒はマイルでの高速決着への対応力が低く、1分31秒台や1分30秒台で決着したマイルG1では連対はおろか3着内に来たこともなかった。
これだけの血統的な不利がある中、今年の安田記念でセリフォスが見せた走りは、1分31秒6での2着だったのである。
右回りには良績のないソングラインが秋のマイルCSに参戦する可能性は低いため、セリフォスとソングラインが再び激突することがあるとすれば、1年後の安田記念が有力。
今回の安田記念でこれまでのダイワメジャー産駒の常識を覆したセリフォスが、今秋のマイルCSで連覇を飾り、来年の安田記念でソングラインにリベンジを果たすという、父親譲りの常識破りな活躍を見せてくれることに期待してみたい。
(文/豊田武志)